クォーツ式と機械式の腕時計は、文字盤や針の見た目が似ているため、外観だけでは見分けにくいものです。秒針やリューズを手がかりにしつつ、型番をもとに公式の仕様を確認することが大切です。
この記事では、クォーツ式と機械式の見分け方と、判断を誤りやすい例外を紹介します。
見分ける前に押さえたい腕時計の3つの駆動方式

腕時計は、代表的な種類として「手巻き式の機械式」「自動巻き式の機械式」「クォーツ式」に分けられます。機械式はぜんまいを動力源とし、手巻き・自動巻きは、そのぜんまいを巻き上げる方法の違いです。
| 駆動方式 | 動力源 | 時を刻む仕組み | 精度の目安 |
| 手巻き(機械式) | リューズで巻いたぜんまい | てんぷという部品が一定のリズムで往復する | 日差数秒〜±数十秒(高精度品は日差±5秒程度) |
| 自動巻き(機械式) | 腕の動きで巻き上がるぜんまい | 同上 | 同上 |
| クォーツ式 | 電池など | 水晶の振動を電子回路で処理する | 一般品は月差±20秒程度 |
日差は1日あたり、月差は1か月あたりの時刻のズレを指します。数日着けて時刻のズレを比べる方法もありますが、時間がかかり、使い方や個体差にも左右されるため、見分ける決め手にはなりません。
ソーラーは発電・充電の方法、電波受信やGPS受信は時刻を修正する機能を表します。一般的なソーラー時計・電波時計・GPS時計は、水晶振動子を時間の基準とするクォーツ式で、これらの機能を組み合わせたモデルもあります。
例えば、タグ・ホイヤーの「アクアレーサー プロフェッショナル200 ソーラーグラフ」(WBP1312.BA0005)は、公式サイトで「ソーラークォーツ」と表記されています。
見た目と操作でわかるクォーツ式と機械式の5つの見分け方
クォーツと機械式を見分ける手がかりは、見た目や操作にあります。ここでは、時計を手に取ってすぐに確認できる5つのポイントを紹介します。
秒針の動きと音
クォーツ式と機械式を見分ける最も手軽な手がかりは、秒針の動きです。クォーツ式の多くは、秒針が1秒ごとに動きます。
一方、機械式の秒針は、1秒間に何度も細かく刻みながら進みます。例えば、毎時28,800振動のムーブメントでは1秒間に8回刻むため、肉眼ではなめらかに見えます。
一般的なレバー脱進機を備える機械式時計では、アンクルが止められるときの衝撃などによってチクタク音が生じます。ただし、脱進機の構造や音の聞こえ方はモデルによって異なり、クォーツ式でも作動音が聞こえる場合があるため、音だけでは断定できません。
リューズの手応え
リューズを回したときの手応えも、見分ける手がかりです。オメガは、同社の時計を識別する手がかりとして、機械式では巻き上げ時にカチッという音や感触があり、クォーツ式ではリューズが滑らかに動くと説明しています。
ただし、手応えは構造や状態によって異なり、手巻き機能のない自動巻き時計もあるため、巻き上げの感触がないだけではクォーツ式と断定できません。
確認するときは、リューズの位置に注意しましょう。一般的に、ねじ込み式はねじを緩めた位置、それ以外は押し込んだ位置で巻き上げます。引き出して回すと、時刻や日付を合わせる操作になります。
一般的な手巻き時計では、十分に巻き上げるとリューズの抵抗が強くなり、それ以上巻けなくなります。一方、手巻き機能付きの自動巻き時計の多くは、満巻きになるとぜんまいが香箱内で滑る構造のため、リューズを回し続けられます。
ただし、構造には例外があるため、止まるまで巻いて判別することは避けてください。無理に力を入れず、ねじ込み式かわからない場合は、先に取扱説明書で操作方法を確認しましょう。
関連記事:リューズとは?腕時計における役割や種類、使用時の注意点を徹底解説
裏蓋
裏蓋がガラス張りの「シースルーバック」なら、内部のムーブメントを観察できます。規則的に往復する「てんぷ」が見えれば、機械式の手がかりになります。半円形の回転錘「ローター」は、自動巻きのぜんまいを巻く部品です。
ただし、金属の裏蓋だからといってクォーツ式とは限りません。ロレックスの多くのモデルは金属の裏蓋を採用しています。また、クォーツ式のグランドセイコー「SBGX261」は、ねじ込み式の裏蓋(スクリューバック)です。
裏蓋の素材や形だけでは駆動方式を判断できません。内部の部品が見える場合に使える手がかりと考えましょう。
止まった時計を軽く振る
止まっている時計を軽く振ると、駆動方式の見当がつくことがあります。自動巻きは、腕の動きでローターが回ってぜんまいを巻き上げるため、振ると再び動き出す場合があります。
手巻き時計は、振ってもぜんまいを巻き上げられません。ただし、ぜんまいに力が残っている場合などには、時計を動かしたことをきっかけに再び動き出すことがあります。そのため、振って動いたという反応だけでは、自動巻きとは断定できません。
振って動かなくてもクォーツ式とは限らず、後述するように、振ると針が動くクォーツ式もあります。なお、強く振ったり、何度も振ったりするのは控えましょう。判断できない場合は、ほかの手がかりや後述の型番確認を試し、メーカーに相談するのもよいでしょう。
文字盤の表記
文字盤に駆動方式の表記があれば、有力な手がかりになります。例えば、グランドセイコーのSBGR315には「AUTOMATIC」、スプリングドライブのSBGA211には「SPRING DRIVE」と記されています。
ただし、駆動方式を表記しないモデルも多く、クォーツ式でも「QUARTZ」と書かれていない場合があります。表記がないだけでは判断できません。
また、「Chronometer(クロノメーター)」は精度の認定を示す言葉で、機械式に限られません。スイスの検査機関COSCは、クォーツ式も認定対象としています。
参考:COSC「Certified Chronometer」
【補足】手巻きと自動巻きの見分け方
機械式とわかったら、日々の扱い方を知るために、手巻きか自動巻きかも確認しましょう。見分ける手がかりは次の通りです。
- ローター:シースルーバックから回転錘が見えれば自動巻き
- 振ったときの反応:軽く振って動き出せば自動巻きの可能性がある
- 公式の表記:仕様欄の「自動巻き」「手巻き」を確認する
ただし、リューズで巻けても手巻きとは限りません。例えば、グランドセイコーのSBGR315は「メカニカル 自動巻(手巻つき)」で、リューズでも巻き上げられます。一方、同ブランドのSBGW301は「メカニカル 手巻」です。
クォーツ式と機械式の手掛かりが当てはまらない例外

ここまでの手がかりだけでは見分けにくい時計もあります。判断を誤りやすい代表例をまとめたので、手元の時計が当てはまるか確認してみましょう。あわせて、見慣れない針の動きでもクォーツ式とわかる合図を紹介します。
| 時計・仕組み | 駆動方式 | 見分けにくい特徴 |
| スプリングドライブ(グランドセイコーなど) | ぜんまい+水晶振動子 | 秒針がなめらかに流れる |
| Bulova「Precisionist」 | クォーツ式 | 秒針がなめらかに流れる |
| デッドビートセコンド(A.ランゲ&ゾーネ「リヒャルト・ランゲ・ジャンピングセコンド」など) | 機械式 | 秒針が1秒ごとに動く |
| 2針モデル・クロノグラフ | 方式を問わない | 時刻を示す秒針がない、または中央の針が止まっている |
| 自動巻き発電(セイコー「キネティック」) | クォーツ式 | 振ると針が動き出す |
スプリングドライブ
スプリングドライブは、ぜんまいを動力とし、水晶振動子とIC(電子回路)で精度を制御する仕組みです。「トライシンクロレギュレーター」という、機械式とは異なる調速機構を備えています。
グランドセイコーでは、メカニカル・クォーツ式と並ぶ3種類のムーブメントの1つとして紹介されています。秒針の動きは、止まらずに流れるように進む「スイープ運針」で、クォーツ式のステップ運針や機械式のビート運針とは異なる動きをします。
自動巻きモデルにはローターもあります。例えば、SBGA211(キャリバー9R65)は、シースルーバックからローターが見えます。秒針の動きやローターの有無だけで、機械式と判断しないようにしましょう。
Precisionist
クォーツ式の多くは秒針が1秒ごとに動きますが、例外もあります。代表例が、Bulova(ブローバ)の「Precisionist(プレシジョニスト)」です。262kHzで振動する独自のクォーツ式ムーブメントを搭載し、秒針がなめらかに動き続けるのが特徴です。
秒針がなめらかに動いても、機械式とは限りません。迷ったときは、リューズの手応えも確認し、公式仕様にクォーツ式と記載されているか確かめましょう。
参考:Precisionist|BULOVA(ブローバ)ジャパン公式サイト
デッドビートセコンド
反対に、機械式でも秒針が1秒ごとに動く時計があります。「デッドビートセコンド(ジャンピングセコンド)」という、秒針を1秒ずつ進める機構を備えた時計です。
代表例は、A.ランゲ&ゾーネの「リヒャルト・ランゲ・ジャンピングセコンド」です。手巻きのキャリバーL094.1を搭載し、機械式でありながら秒針が1秒ごとにジャンプして進むのが特徴です。
採用モデルは限られますが、秒針が1秒ごとに動くだけでクォーツ式とは断定できません。気になる時計が該当するか、公式仕様で確認しましょう。
参考:リヒャルト・ランゲ・ジャンピングセコンド|A.ランゲ&ゾーネ
2針モデル・クロノグラフ
時針と分針だけの2針モデルは秒針がないため、その動きでは見分けられません。
クロノグラフ(ストップウォッチ機能付きの時計)も注意が必要です。一般的に、中央の長い針は計測用で、普段は止まっています。時刻を示す秒針は、文字盤の小さな円(インダイヤル)の中にあるモデルもあります。
中央の針だけを見て「止まっている」「1秒ごとに動かない」と判断しないようにしましょう。秒針で見分けられない場合は、リューズや裏蓋、型番を確認してください。
自動巻き発電
「振ると動くのは自動巻き」という手がかりにも例外があります。セイコーの「キネティック」は、腕の動きで内蔵の発電機を回し、発電した電気で動くクォーツ式時計です。
キャリバー7D46・7D48の取扱説明書でも、セイコー独自の機構を持つクォーツ式時計と説明されています。また、針が止まる「パワーセーブ」状態から、数回振ると現在時刻を素早く表示する「自動時刻復帰機能」を備えたモデルもあります。
振って針が動き出しても、自動巻きの機械式とは限りません。振ったときの反応だけで判断せず、型番や公式仕様も確認しましょう。
【クォーツ式の手がかり】秒針が数秒おきに動く警告表示
クォーツ式には、電池の消耗や充電不足を、通常と異なる秒針の動きで知らせるモデルがあります。
例えば、グランドセイコーの9F系などは2秒おき、オメガの一部のクォーツ式は4秒おきに秒針が進み、電池交換時期を知らせます。機能の有無や動き方は、キャリバーによって異なります。
通常と異なる運針が見られたら、まず取扱説明書で意味を確認しましょう。電池交換式で電池消耗を知らせている場合は、早めにメーカーや正規店へ交換を依頼してください。ソーラー式などで充電不足を知らせている場合は、取扱説明書に従って充電します。
クォーツ式と機械式の確実な見分け方
クォーツ式と機械式の判断に迷ったときは、型番をもとに公式サイトで仕様を確認するのが最も確実です。型番がわからない場合の相談先も紹介します。
型番やキャリバー番号を確認する
公式仕様を調べるには、型番かキャリバー番号を確認します。型番・品番・リファレンス番号は、時計の商品モデルを識別する番号です。
キャリバー番号は、搭載するムーブメントの型式を示します。時計本体には、ケースの型式番号や個体ごとの製造番号も記載されるため、商品モデルを示す番号と混同しないようにしましょう。
まずは裏蓋の刻印を見てみましょう。例えば、グランドセイコーでは、裏蓋にある型式番号の4桁がキャリバー番号です。セイコーも裏蓋で確認でき、その番号をもとに公式サイトで取扱説明書を探せます。
裏蓋でわからなければ、保証書や購入時の書類も確認しましょう。型番が記載されている場合があります。
公式仕様のムーブメント欄を見る
型番がわかったら、公式サイトの製品ページで「ムーブメント」などの仕様欄を確認しましょう。同じコレクションでも、型番によって駆動方式が異なる場合があります。
| ブランド・モデル | 型番 | 公式の駆動方式表記 |
| カルティエ タンク マスト ウォッチ ラージモデル | WSTA0054 | クォーツムーブメント |
| カルティエ タンク マスト ウォッチ ラージモデル | WSTA0136 | 高効率クォーツムーブメント |
| カルティエ タンク マスト ウォッチ ラージモデル | WSTA0138 | 光発電 ソーラービートムーブメント |
| カルティエ タンク マスト ウォッチ エクストララージモデル | WSTA0053 | 自動巻きムーブメント |
| ロンジン コンクエスト(41mm) | L3.860.4.92.6 | クォーツ時計 |
| ロンジン コンクエスト(41mm) | L3.830.4.92.6 | 自動巻時計 |
カルティエの「タンク マスト」のように、商品名に続く表記で駆動方式がわかる場合もあります。一方、駆動方式が1種類に限られるブランドもあります。例えば、ロレックスの現行モデルは、すべて機械式の自動巻きです。
キャリバー番号の頭文字(グランドセイコー)
グランドセイコーの近年の主要なキャリバーは、先頭の英数字から次のように分類できます。
- メカニカル:9S系
- スプリングドライブ:9R系
- クォーツ式:9F系・8J系・4J系
ただし、過去のすべてのグランドセイコーに当てはまる一覧ではありません。旧型には95系のクォーツなどもあるため、一覧にない番号は公式の取扱説明書などで確認してください。
キャリバー番号は、裏蓋にある型式番号の4桁で確認できます。新しい世代には、9SA5や9RA2のように途中にも英字を含むものがあります。なお、この区分はグランドセイコー独自のもので、他のブランドには当てはまりません。
参考:キャリバー番号および防水性能ご確認のお願い|グランドセイコー
関連記事:【グランドセイコー】GMT機能付き腕時計の種類とおすすめモデル
メーカーや正規店に相談する
譲り受けた時計や書類のない古い時計は、型番やキャリバー番号がわからないこともあります。その場合は、ブランドのカスタマーサービスや正規店に相談しましょう。
止まっていても、電池切れとは限りません。機械式は電池交換では動かないため、まずは駆動方式と時計の状態を確認してもらい、必要な手入れを判断しましょう。
駆動方式が分からないまま、リューズを強く回したり、何度も振ったりするのは控えてください。特に古い時計は、扱う前に相談すると安心です。
秒針の動きやリューズの感触をレンタルで確かめるのもおすすめ

同じモデルにクォーツ式と自動巻きがあると、どちらを選ぶか迷うこともあります。秒針の動きやリューズを巻く感触は、仕様表だけではわかりにくいものです。腕時計のレンタルなら、購入前に一定期間着けて、次のような違いを確かめられます。
- 秒針の動き:1秒ごとに動く針となめらかに動く針の見え方
- リューズの操作:巻き上げや時刻合わせにかかる手間
- 着けない日の影響:自動巻き時計を外してから止まるまでの時間や、再使用時の巻き上げ・時刻合わせの手間
止まるまでの時間は、モデルのパワーリザーブと、外した時点の巻き上げ量によって異なります。手巻き時計は、着用の有無にかかわらず、定期的な巻き上げが必要です。
レンタルでは、モデルを入れ替えて比較することもできます。クォーツ式と機械式のどちらが自分の生活に合うか、購入前に確かめる方法として検討してみてください。
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まとめ
クォーツ式と機械式は、秒針の動きやリューズの手応え、裏蓋、振ったときの反応、文字盤の表記が見分ける手がかりになります。
ただし、秒針がなめらかに動くスプリングドライブや、1秒ごとに動く機械式、振ると針が動くクォーツ式などの例外もあります。確実に見分けるには、型番をもとに公式仕様を確認しましょう。
型番やキャリバー番号がわからない場合は、メーカーや正規店に相談すると安心です。駆動方式がわかれば、電池交換やオーバーホールなど、必要な手入れも判断しやすくなります。
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