カワセミの姿から500系新幹線の先頭部分を開発するなど、自然界の仕組みをヒントに技術開発するバイオミミクリー。今回お借りしたCITIZENアンビュリナのダイヤルには、そのバイオミミクリーの考えのもと、タマムシの発色をヒントに富士フイルムが開発した構造色インクが使われているそうです。これはインク膜内に微細構造を形成する技術によって構造色を発現させるものということで、さっそく20倍ルーペでダイヤルを観察してみました。すると、発色の違うつぶつぶがダイヤルにびっしり見ることができるではありませんか。更に少し離れてダイヤルを見ると、(ちょっと盛りすぎかもしれませんが誤解を恐れず言うなら)APのコード11.59と見まごうほどの美しさを見ることができます。写真では決して伝えられない美しさです。コードが日付の変わる1分前なら、アンビュリナは夜が明ける1分前を表現、といったところでしょうか。日本のトップメーカーがタッグを組んで、自然の生き物の色をダイヤルに活かした腕時計を作ったのかと思うと、感動すら覚えます。さらに、エコドライブや構造色インクといった最新の技術を用いて自然を表現しようとする、一見相反するもの同士をぶつける発想は、GSが美しい白樺を、ショパールのアルパインイーグルがワシの眼をダイヤルに表現するのと同じ「もの作りに挑戦」する姿勢であるようにも思えます。また、本機の特徴としてもう一つ特筆すべき点は、本機はレディースモデルとなっていますが、ケースサイズは34mmあり、腕周り16cmの私の腕でも全然イケるという汎用性です。先述のダイヤルが黒っぽいことやエシカルでサステナブルなラボグロウンダイヤモンドが控えめなこと、本体実測53gの軽さと黒メッシュベルトの軽快な着け心地も相まって、ユニセックスモデルとしてラインナップに入れて欲しいところです。CITIZEN"L"シリーズの10周年記念モデルとして世界限定1,050本のアンビュリナ。国内メーカーの意欲作として、応援したくなる一本でした。